• Virtuosa
  • 塑心
  • 비르투오사

ヴィルトゥオーサ

補助タイプ — 祭儀師
敵に術ダメージを与える、元素損傷を付与可能
  • LT22
  • 遠距離
  • 元素
  • 支援
/ 90
【コードネーム】ヴィルトゥオーサ
【性別】女
【戦闘経験】なし
【出身地】ラテラーノ
【誕生日】9月23日
【種族】サンクタ
【身長】168cm
【鉱石病感染状況】
メディカルチェックの結果、非感染者に認定。
【物理強度】標準
【戦場機動】標準
【生理的耐性】標準
【戦術立案】標準
【戦闘技術】優秀
【アーツ適性】卓越(追記を参照)

【追記】
ヴィルトゥオーサのアーツの才能は、本人の音楽才能と比べても引けを取らない。リターニアでは元より、音楽とアーツを切り離して考えることは滅多にない。学生時代をリターニアで過ごしたおかげで、ヴィルトゥオーサは音楽とアーツの造詣を同時に深めることができた。異なる系統の様々なアーツを学び研究することは、ヴィルトゥオーサにとっては異なる楽器の奏で方を学ぶのと同じくらい容易だった。だが、彼女の特殊なアーツに関しては、能力測定で用いられるアーツ評定形式では正確な評価を下すことは難しいと思われるため、さらなる測定が必要となる。
アルトリア・ジアロ、ラテラーノ出身。テラ各地で活躍してきた有名な音楽家。リターニア帝国宮廷及びラテラーノ教皇庁からの依頼により、ロドスは双方と協定を結び、関係者の厳重な監視のもとに、オペレーター「ヴィルトゥオーサ」として彼女がロドスに一時滞在することを許可した。
造影検査の結果、臓器の輪郭は明瞭で異常陰影も認められない。循環器系源石顆粒検査においても、同じく鉱石病の兆候は認められない。以上の結果から、現時点では鉱石病未感染と判定。

【源石融合率】0%
鉱石病の兆候は見られない。

【血液中源石密度】0.12u/L
テラの大地を渡り歩いた経験において、ヴィルトゥオーサはどの経験豊富なトランスポーターにも決して引けを取らないだろう。本人の話によれば、旅の計画を立てる時は――本当に計画を立てているかどうかは疑わしいが――特に意識して鉱石病に感染しやすい環境を避けたりはしていないと言う。だが結果だけを見れば、彼女の血液中源石密度が比較的健康なレベルを維持しているのも事実である。

【医療部追記】
ラテラーノ教皇庁から奇妙な要請が届いた。通常の身体検査の他に、ヴィルトゥオーサには特殊な心理テストを行ってほしいとのことだ。ロドスには心理的健康への評価システムが備えており、「健康」の基準を下回るオペレーターも少なくない。そのため、ヴィルトゥオーサのテスト結果にはすでにある程度の予測はついている。
//アクセス制限項目:【評議会#1】
日付:1100/■■/■■
【会議出欠状況】
ロドス人事部:出席
ロドス医療部:出席
リターニア恩寵の塔:出席
リターニア感応アーツ学会:出席
ラテラーノ教皇庁:出席
ラテラーノ公証人役場:出席

【尋問録画】
【再生開始】
【05:17/05:35:36】
「この場に出席している各位の当事者に対する理解度を考え、当事者紹介を省略し、直接尋問を開始することを提案します。」
「女帝の声はまだ該当報告に目を通している。執行人殿はどうしてそんなに焦っておられるのかな?」
「リターニアの皆さんは今さら報告を通して当事者を知る必要があるのですか?」
「コホン……」
「フェデリコさん、初回の評議会のために三時間は予定を空てますので余裕はありますよ。それに事前の取り決めに基づけば、女帝の声には確かに報告を一読する権利があります。」
「三時間ですね。では計測を始めます。」
「……本評議会はロドス人事部が進行を務めさせていただきます。また、当事者のアーツについて理解を深める一助として、アーミヤさんにも傍聴していただきます。」
「まさかこんなにも早くアーミヤさんに会えるなんて。彼女がいれば、皆さんも少しは安心できるかしら?」
「なんて、そんなことはないのは、わかっているわ。」
【07:38/05:35:36】
【一時停止】

【会議記録 添付ファイル#2 感応アーツ学会意見陳述】
……
初期の調査報告で上がった回答を採用するとすれば、ヴィルトゥオーサのアーツは要するに他人の感情を「増幅」させ、更には他人が衝動的な行動に走るよう「扇動」するものであると推測される。そのため、人々は多くの場合深く考えもせずに、それを精神系アーツ――私個人としては、リターニアのアーツ分類でいう「感応伝達系」アーツという言葉の方がより好ましいのだが――の一種としてみなし、単純にそれを「幻術」や「幻覚」の構築、もしくは「マインドコントロール」であると思い込みがちだ。
だがその実、彼女のアーツはごく稀な類いのものである。残念ながら、このタイプのアーツに対する我々の研究と知識はまだ十分とは言えないため、効果やメカニズムへの判断を誤り、間違った結論を下してしまうこともあり得るだろう。
……
あらゆる調査報告の中で、最も詳しい記述が残されており、また最も参考になるのがラテラーノ公証人役場による1092年の事件記録である――該当記録において、作成者のフェデリコ・ジアロはラテラーノ側の認識に基づき、ヴィルトゥオーサのアーツを「共感の拡大」と総括した。そこから、我々は一つ興味深い仮説を立てた。ヴィルトゥオーサのユニークなアーツは、サンクタ人の共感能力と感応伝達系アーツの共同作用による結果ではないのかと。その仮説を元に、評議会に出席した者やヴィルトゥオーサ自身、そして被験者の同意を得て、彼女のアーツに対するさらなる研究を行った。
……
今回の研究の中で単独測定と比較測定の形式がとられたのだが、本報告では概論のみを述べ、具体的な測定記録及び受験者のフィードバックは別途記載する。
単独測定において、ヴィルトゥオーサがアーツで音楽を奏でた時、三つの異なる機器で旋律と被験者の感情の高ぶりの瞬間が重なる周波数帯を捕えた。ヴィルトゥオーサはどうやら、その周波数の重なりを「察する」ことができ、さらにアーツを用いてある種の「共鳴」効果を引き起こしているようだった――共鳴するのは被験者と音楽だけでなく、アーツの使用者であるヴィルトゥオーサ本人の感情の波動も含まれている(添付ファイル#3を参照)。
比較測定において、ヴィルトゥオーサは我々にもう一つのアーツの形式を披露してくれた。それは各位も注目している、女帝の祭典で彼女が見せたアーツの効果である。ヴィルトゥオーサは被験者三名に同時に感情の共鳴を体験させた(添付ファイル#6を参照)。具体的にどのように作用しているのかは、まだ判明していない。
……

【会議記録 添付ファイル#4 被験者#1:■■■■■夫人】
身にもって体験していなければ、ヴィルトゥオーサのアーツが彼女の「被害者」たちに、どんな作用をもたらしたのか、理解するのは難しいでしょうね。サンクタが他人に共感がどのように働いているのか、言葉で説明しても分かってもらえないのと同じことよ。
意識と認知学の研究者として、私は人の意識を湖に例えるのが好きなの。私たちの普段の言動は、湖に映し出された風景や、風が吹き抜けた時のさざ波に過ぎない。私たちの潜在意識も、せいぜい湖の数メートル下にいる鱗獣や小石程度の存在よ。人はしばしば、その湖の存在を当たり前なものだと思い込み、湖を形作っている小さな水滴の存在を蔑ろにしてしまいがちなの。その水滴こそ、私たちが常に感じている悲しみや喜びの感情、そして心に抱える思いなのよ。でも小さな水滴は、広大な湖に注ぎ込まれると、一瞬にして混ざり合ってしまう。だから私たちの目は大きな湖は捉えられるのに、絶えず流れ込むか細い水流には気付けないんだわ。
でも、ヴィルトゥオーサのアーツはそのか細い流れの一つ一つを可視化させるの。彼女のアーツによって、とうに意識の中で忘れ去られ埋もれてしまった、あるいは意図的に隠してしまった記憶の断片が、今までなかったレベルに強調されてしまう。その断片は一つの時もあれば、複数同時に強調されることもあるわ。その記憶たちは、基本的には旋律そのものが掻き立てる最も強烈な感情に関連しているの。強調された記憶たちは、勝手に水面上へと浮かび上がり、私たちに意識の湖の在り方についてもう一度考えさせてくれる。私たちはしばしば、そのような反省が現実の行動や意思決定に与える影響を過小評価してしまうけどね。
だけど今回の実験で、ヴィルトゥオーサのアーツを通して気付いたわ。「湖」だけで人の意識の広さを表現するのは到底足りない。湖なんかじゃ、ヴィルトゥオーサの音楽が巻き起こす荒波は収まり切れない。そうね、もしかしたら「意識の海」と呼ぶ方がもっと適切かもしれないわね。

【会議結果】
評議会に参加した全員による共同審議の結果、オペレーター「ヴィルトゥオーサ」の用いるアーツはそのメカニズムが未だ不明であり、有害性も評価不可能なため、後続の観察及び研究のため協定通りロドスに引き渡すこととする。ロドスに駐在中のヴィルトゥオーサは引き続き管理が必要であり、いかなる行動も監視を要し、すべての発言は記録する必要がある。また、許可のない演奏行為はすべて禁じる。

【権限記録】
評議会での皆さんの仮説は間違っていません。ヴィルトゥオーサさんのアーツは、心の奥に眠る最も特別な記憶を呼び覚まします。その記憶は何らかの情緒を誘発し、感情を生み出します。ですが、音楽を聴いた人々が呼び起こす記憶を、彼女が意図的に操作することはできません。それと、この大地に存在したことのない感情や経験を体験させることも不可能です。悲しむ者を喜ばせることもできなければ、残虐な者に慈悲深い心を芽生えさせることもできません。彼女のアーツが見せる強大な力は、呼び覚まされた人々の自我と音楽の共鳴によるものでもあります。ヴィルトゥオーサさんはきっと、そのことをとうに知っているのでしょう。彼女は自分の奏でる音楽を使って、他人の本性を捻じ曲げようとしたことなどありません。できないからではなく、そうしないと決めているからです。
長期にわたる評議の結果、ヴィルトゥオーサは最終的にオペレーターとして本艦に受け入れられた。ロドス側として厳重な禁足令を敷くことはなかったが、それでも要求された通り、ヴィルトゥオーサが本艦に滞在している間は、関連オペレーター――つまりイグゼキュターを常に同行させ、「その安全を確保するように」と依頼した。いずれにせよ、ヴィルトゥオーサは何とかロドスである程度の行動の自由を得ることができたのだ。
だが、ヴィルトゥオーサがやってきたことにより、ロドス内に緊張が走るのは避けられなかった。ヴィルトゥオーサの今までの経歴は、すでにロドス内で噂となっており、彼女と接触する際の注意事項に関しても、各部門で繰り返し強調されている。そのすべてが、彼女がただならぬ力を持っていることを裏付けているのだろう。彼女のチェロの音色はサルゴン、クルビア、そしてリターニアの心臓部にすら、あれほどの騒動をもたらしたのだから、ロドスへ与える影響など想像すらもできない。
だが、彼女の奏でる旋律が響くことはなかった。これはロドスが課した制約のみによる結果ではない。銃を手に常に目を光らせているイグゼキュターや、何よりチェロの持ち主本人の意思によるものでもあるのだ。ロドスへやって来てから、弦の振動を制限するために取りつけられたバックルは、もう長いこと外されていない。ヴィルトゥオーサは一度、オペレーターたちにチェロの弦を触らせたことがある。だがその弦は震えることすらなく、始終沈黙を保ったままだった。
「楽章が素晴らしいかどうかは、もちろん演奏者がどれだけの敬意を払っているのかも大切だけれど、結局は楽章そのものによって決まるわ。ロドスの楽章はすでに十分素晴らしいもの。私の拙い雑音で邪魔してしまうのは、あまりにも失礼だわ。」

【権限記録】
幻覚というものは人の色々な複雑な感情を掻き立てるんですが、一つだけ――孤独の感情は常にそこにあります。しかし、ヴィルトゥオーサさんのアーツは幻覚とは違います。私には分かります。彼女は聞き手に寄り添って、心の音色の短い旅を最後まで忠実に歩んでくれるんです。聞き手の耳を通して同じ音を聴き、目を借りて同じ涙を流してくれます。彼女の音楽の聞き手が、孤独を感じることはありません。ある意味、ヴィルトゥオーサさんは誰よりも真摯な心を持っているんです。
【ヴィルトゥオーサの私物である楽譜集。中には五線譜も音符も書かれておらず、代わりに整った筆跡で楽曲のタイトルと演奏に使われた楽器、そして作曲時期が記録されている。それとこの文章は……作品解説のようだが――ヴィルトゥオーサは、こんなやり方で音楽を記憶しているのだろうか?】

「天空の夢」(1086)
楽器:ハーモニカ
「自由に空を飛びたい」。これは太古の昔から人々が抱える憧れである。寄る年波のままに体が衰えていようと、空を仰ぎ見ることさえできれば、焦がれた夢はそこに広がっている。
軽やかに響き渡るハーモニカの音色が、きっとそうした夢追い人たちの背を押すことだろう。

メヌエット「踊る国王」(1091)
楽器:空の酒瓶(飛鱗ビールは音域が広い。ママジョンズは音色が澄んでいる。赤ワインの瓶はゴミ箱行き)
空の酒瓶を使っての演奏は初めてだが、瓶で奏でる音階がこれほどに面白いとは。先日の酔っ払いの方のおかげだ。やはり法学部は人材豊富である。インスピレーションを得るためにも、今後はあそこの芝生にもっと通ってみよう。

「灼熱の風」(1093)
楽器:チェロ。砂漠ドラムも取り入れるとなお良し
サルゴンの人々は本当に情熱的!真夏よりも輝かしく、太陽よりも熱い心を持っている……もっと豊かな生活、もっと情熱的な歌こそ彼らに相応しい。
灼熱の風が砂礫を巻き上げ、灼けた砂を引き連れ、太陽をも覆い隠す。

ノクターン「楽園」(1099)
楽器:チェロ
この大地はあまりにも多くの流浪、そしてあまりにも重い悲しみを背負っている。だけど、どうかそのことをお花たちには伝えないで。そんなものでお花たちを騙さないで。
願わくば、花の魂が楽園にたどり着きますように。花の苦痛が、安らぎに変わりますように。

ミサ曲「君王」(1100)
楽器:チェロ
誰か一人のためではなく、全ての君臨する者のために織りなされた曲。
ツヴィリングトゥルムの夕焼けを記憶に刻む。君王に別れを告げ、そしてまた君王となる。

【ステファン区中央病院・精神共感科診療報告書】
まずは、我々の搭乗と、あのような厄介な人物に精神鑑定を行うことを、許可してくれたロドスに感謝を述べたい。我々の「離群」症例――私自身はその現象を「病」と称することに抵抗を感じているのだが――に対するより強い好奇心を、引き出してくれたのがアルトリアなのは認めよう。それは彼女が、長年放浪生活を続けていたからだけでなく、ある意味において聖都に「追放」された個体でもあるからだ。これまでの離群者に対する理解を元に考えれば、今のアルトリアの共感能力は、彼女が聖都にいた頃に比べて大幅に弱まっているはず。だが、アルトリアの当時と現在の共感能力を定量化し照合した結果、その力は弱まっているどころか、むしろ彼女のアーツを通して、以前とは全く異なる姿へと進化していた――それについては多くを語る必要もないだろう。皆もすでに彼女だけが有している「共感」の威力を目の当たりにしたはずだ。ラテラーノでの暮らしと長らく無縁だったアルトリアが、どのようにしてこの力を鍛え上げたのか――その答えは、彼女の長期にわたるテラ遍歴にあるのだと私は考えている。
もちろん、この力を「共感」と呼んでいるのは私個人の習慣に過ぎない。この呼び方の方が、ラテラーノの同業者諸君も理解しやすいためである。しかし実際のところ、アルトリアのアーツは、作動方式、作動原理、そしてその結果のいずれをとっても、本当の共感とは全く異なっている。現状では設備にも権限にも制限があるため、調査はここまでとする。いつかアルトリアが本当の意味で聖都に帰還した暁には、第六庁主導の元、さらに多くの精神科医師を……何なら第七庁六十六所の者たちも加えて、アルトリアにもっと全面的な検査を施すつもりだ。
アルトリアが法と秩序にもたらす影響は、何も破壊のみとは限らないと、今はなんとなくそう感じているが、彼女が犯してきた罪や受けた非難も、一人で背負いきれるほどのものではない。何にせよ、時が来れば、決断は法が下してくれるだろう。
あなたはある悪夢に足を踏み入れた。
悪夢の中では声を発することもできず、他人の顔もはっきりと見えない。
だけど、不意に懐かしい声を聴いた。温かくて、明るくて、まるではるか昔に歌われていた童謡のよう。
「アルトリア、大丈夫?少しはよくなったかしら?」
「まだ気分が悪い?昨日見た悪夢のこと、もう一度ママに話してくれる?」
「アルトリア、怖がらないで。」
「声が出せなくたって、人の顔が見えなくたって、なんにも怖いことはないのよ。」
「アルトリア、ママのところへおいで。」
「ほら、これがチェロよ。ママが教えてあげる。」

弓が弦にかけられ、音のない雨が奏でられた。雨だと分かったのは、降ってきた雨粒が顔に当たったからだ。
痛い。熱い。あの童謡を探さないと。彼女はどこに行ったの?
何かの強い力で押されている。誰しもが顔をベールで覆い、遠く離れたところにいる。だけど、誰かに腕を掴まれた感覚がした。
「アルトリア・ジアロ。悲しまないで。」
「君の父親は君を責めてはいないよ。彼はただ、まだ事実を受け入れられないというだけさ。」
「これは君の母親が遺してくれた手袋だ。これをはめてほしいと、君の父親が言っていた。」
「自分の音楽をコントロールできないのなら、誰か他の人の力を借りるしかないね。ほら、まずはこの手袋の力を借りてごらん。」
「これは罰などではないよ、アルトリア。ほかの者を守るためなんだ。君の周りにいる人、そして、君の大切な人たちを守るためだ。」
「これ以上みんなを傷つけないで、アルトリア。」

人影が墨色の雨に溶け込み、燃える雨粒が混ざり合い、墨色の太陽となっていった。
それは頭上で高く掛かっており、黒い光を零し、視界を奪う。
「来るのが遅すぎたわね、アルトリア。」
「恩師の最期に立ち会えず、ろくに別れも告げられないなんて。」
「彼の死はとっくに予期していたのでしょう?」
「かの高塔の下で演奏したことがある時点で、死の運命は決まっていたからね。」
「本当に残念だわ。たとえエマニュエルであっても、運命に抗うとこんな結末を迎えてしまうのよ。」
「あなた?あなたに何ができるというの?」
「何にもできないわよ、アルトリア。」

墨色の太陽が沈み始めた。それは振り返りもせず、一目散に人の海へと身を投じた。
喧騒の海はようやく一滴の涙となり、頬を伝い、心の奥へと流れ落ちていく。
声が聞こえた。
「怖がらないで、アルトリア。」
その時、音楽が止んだ。

「ごめんなさい、来ていたことに気付かなかったわ。今の曲は一人でいる時にしか練習しないものだから、まだあまり上手じゃないの。恥ずかしいところをお見せしちゃったわね。」
「実は、この曲はまだ未完成よ。新しいインスピレーションが湧いたばかりなの。こんな創作方法は私にとってはすごく新鮮で難しいわ。この大地で、こんな風に生まれた曲はまだないはずよ。」
「だからこそこの曲は、どのフレーズも真心を込めて作られたのだと言い切れる。これは、私自身の旋律なの。」
「曲の名前ならとっくに決めているわ。」
「その名は、心を形作る――『ヴィルトゥオーサ』よ。」
彼方の空が綿状の天災雲を吐き出している。太陽は嵐の中へと沈み、不吉な夕焼けがロドスのデッキに落とした赤色は、干上がった血のようにも、焼け焦げた大地のようにも見えた。
あなたは身を翻し、艦内に戻ろうとした。この先の航行はきっと一筋縄ではいかないだろう。
その時にようやく、デッキにいたのは自分だけではないことに気付いた。一人の……ただ一人だけの客人がいたのだ。いつ来たのかも、自分の後ろにどれだけの間立っていたのかも分からない。そんな黒髪のサンクタに、あなたは今になって気がついたばかりだ。
あなたは船室へと向かう。禍々しい光が、彼女の顔に這い上がろうとしているのが見えた。彼女はいつもと変わらない穏やかな表情をしていた。そういえば、彼女には感情がないのだと聞いたことがある。
だがあなたには、彼女が笑っているように見えた。それは、あの日のスポットライトの下で、彼女が浮かべた笑顔を彷彿させた。
彼女が右手に持った弓を、左手で抑えている弦に宛がったのを見た。あなたは彼女が乗艦した理由を思い出した。
弓が弦と擦れ合う。一つ目の音符が脳裏に駆け巡った。彼女は演奏を禁止されていた、特にあなたに対しては。そのためあなたは完全に無防備だった。もはや何をしても手遅れだ。
だが、音楽は突如途切れた。サンクタはそれ以上演奏を続けようとしなかった。ふと気が付けば、彼女はすでに目の前に立っていた。
「ドクター、あなたを奏でることはないわ。少なくともロドスにいるうちはね。」
サンクタは弓を掲げた。木製の弓の先端に、透き通った真っ白な雲が止まっていた。まるで生まれたばかりの氷の結晶のように、どこからともなく咲いた花のように。
「だけどこの雲を奏でることくらいは、許されるわよね?」
黒い手袋をはめたサンクタが雲をすくい上げる。
あなたはその白い雲を受け取った。振り返ると、太陽はすでに沈み、天災雲は空を覆い隠す分厚い天幕を織りなしていた。
「新たな旅路が順調に進むことを祈っているわ。」
彼女の言葉が終わるや否や、雲は姿を変え、夜空へと散っていった。
HP
1501
攻撃力
525
防御力
109
術耐性
15
配置コスト
16
攻撃間隔
1.6 秒
ブロック数
1
再配置時間
70 秒

素質

  • 言葉なき哀歌
    1秒ごとに攻撃範囲内の敵に攻撃力の10%の壊死損傷を与え、0.2秒足止めする
  • 精神逆構築
    攻撃範囲内の敵が受ける壊死損傷の効果値+20%

スキル

設定で詳細一覧を有効にして、詳細データが表示されます。
  • 「黄金のエクスタシー」
    自動回復自動発動
    初期SP
    18
    必要SP
    6
    壊死損傷の爆発効果中でない敵1体に攻撃力の300%の術ダメージを与え、追加で攻撃力の110%壊死損傷を与える
    3回チャージ可能、スキルでのみ攻撃行動を行う
    atk_scale
    3
    ep_damage_ratio
    1.1
  • 「鎮魂のミサ」
    自動回復手動発動
    初期SP
    14
    必要SP
    24
    継続時間
    20 秒
    攻撃速度+60、攻撃対象数+1、自身および攻撃範囲内で攻撃力が最も高い他の味方オペレーターが敵にダメージを与えたとき、対象に追加でヴィルトゥオーサの攻撃力の25%壊死損傷を与える
    attack_speed
    60
    ep_damage_ratio
    0.25
  • 「自由のタンゴ」
    自動回復手動発動
    初期SP
    40
    必要SP
    60
    継続時間
    40 秒
    攻撃しなくなり、攻撃範囲拡大、攻撃力+180%、第二素質の効果が2.5倍まで上昇。スキル発動中、攻撃範囲内の自身を除くオペレーターを対象に、最大HPが最も高い者の最大HP+30%、攻撃力が最も高い者の攻撃力+30%、防御力が最も高い者の防御力+30%
    atk
    1.8
    scale_delta_to_one
    2.5
    cello_s_3[max_hp].max_hp
    0.3
    cello_s_3[atk].atk
    0.3
    cello_s_3[def].def
    0.3

基地スキル

  • 声なき協奏
    配置宿舎内、オペレーター1名につき、静かなる共鳴+1
  • 言葉なき賛歌
    配置宿舎内、全員の1時間ごとの体力回復量+0.2静かなる共鳴5ごとに、配置宿舎内の全員の1時間ごとの体力回復量が追加で+0.01(同種の効果は高いほうのみ適応)