• Ebenholz
  • 黑键
  • 에벤홀츠

エーベンホルツ

術師タイプ — 秘術師
敵に術ダメージを与える
攻撃の対象がいない場合はエネルギーをチャージして(最大3回)次の攻撃時に一斉発射する
  • LN05
  • 遠距離
  • 火力
/ 90
【コードネーム】エーベンホルツ
【性別】男
【戦闘経験】なし
【出身地】リターニア
【誕生日】6月5日
【種族】キャプリニー
【身長】173cm
【鉱石病感染状況】
メディカルチェックの結果、感染者に認定。
【物理強度】標準
【戦場機動】普通
【生理的耐性】普通
【戦術立案】標準
【戦闘技術】標準
【アーツ適性】卓越
エーベンホルツはリターニアの一般市民である。ヴィセハイム事件で鉱石病に感染し、ハイビスカスの紹介によって治療のためにロドスへやってきた。アーツにおける優れた才能を有する。審査を経て、外勤オペレーターとしてロドスに加入した。
造影検査の結果、臓器の輪郭は不明瞭で異常陰影も認められる。循環器系源石顆粒検査の結果に異常があり、鉱石病の兆候が認められる。以上の結果から、鉱石病感染者と判定。

【源石融合率】5%
体表に少量の源石結晶の分布が見られる。

【血液中源石密度】0.22u/L
罹患後すぐに治療を受けられなかったため、病状がやや進行していた。現在は症状のコントロールに成功している。
とっつきにくそうなキャプリニーの青年。
もし彼に時間を尋ねば、時計を確認して、今が何時何分かを礼儀正しく教えてくれる。しかしその話題をきっかけに雑談をしようとするなら、彼はマナーをわきまえた言葉遣いで会話を終わらせにかかるだろう。
彼に心を開いてもらえるのは、ドクターと極数名のオペレーターだけである。彼らと話している時のみ、エーベンホルツは他人にはあまり見せない一面を顕わにし、忌憚なく意見を述べる。だが、何を語るにしても口調は皮肉気で、自分自身の話をする時もそれに変わりはない。むしろ、他の話題よりもさらに自嘲めいた趣が感じられる。
時々、エーベンホルツが楽器を演奏する姿が目撃される。目撃者によれば、彼は多くの楽器を自由に扱えるが、最もよく演奏するのはチェロである。彼が奏でるチェロの音は悲しみに満ちており、聴く者に過ぎ去った人々や出来事を思い出させてしまうという。
また、噂によれば、エーベンホルツはフルートをも得意としているらしい。しかし彼はロドスでは一度もフルートを演奏したことがない。
リターニアの公式資料によれば、エーベンホルツはリターニアの中規模都市であるヴィセハイムの出身で、市内の大学で音楽とアーツを専攻とする普通の大学生だという。ヴィセハイムで発生した不幸な事件に巻き込まれて鉱石病に感染したため、やむを得ず勉学を中断し、治療を求めてロドスへやってきたのである。

【権限記録】
残念ながら、例の資料のほとんどは嘘だ。
エーベンホルツはヴィセハイム出身ではない。彼は今までの人生のほとんどを、廃退した小さい町ウルティカで過ごしてきた。
また、彼は一般市民でもない。少なくとも、ウルティカにいた頃はそうではなかった。ロドスに向かうことになるまで、彼はずっとウルティカ伯爵だった。彼の後見人を指名された者はウルティカ伯爵代理として様々な命令を下していた。それは彼が成年してからも変わらなかった。
他の貴族の子供と同じく、エーベンホルツはリターニアの貴族として必須の教育を受けた――礼儀、文学、アーツ、そしてアーツと深く繋がっており、場合によってはアーツよりも重要な音楽など。
多くの貴族は、子供のためにできる限り良い音楽教師を雇おうとする。そしてその教師たちは子供たちの成長において大きな影響を与える。一部の貴族は、相手が師事した音楽教師の名声の大きさを、その者を評価する基準の一つとしているほどだ。
しかし、エーベンホルツによれば、彼の後見人はそうしたくなかったらしい。
「あの教師は数種類の楽器を私の前に置き、どれに興味があるかを優しく問いかけてきた。」
「ヴァイオリンを掴んで少し弾いてみたら、彼は大いに喜び、私は天才なのだとしきりに褒め称えた。だが私は彼の誉め言葉に応える余裕もなかった。あの楽器の数々を見た瞬間、知るはずもなかった概念や扱い方が頭にどっと湧いて出たのだ。まるで誰かがそこにいて、私に命令しているようだった。」
「それでも私は嬉しかった。ウルティカに来て初めて、誰かがこれほど熱烈に私を褒めてくれたからだ。ふっ、あれほど口先だけの賛辞を聞いてきたというのに、全く学習しないな。」
「翌日、またその教師に会った。しかし彼が私を見る目には、もはや嫌悪しか残っていなかった。間違いなく、我が代理人殿から何かの事実を聞かされたのだろう。」
記録担当の人事部オペレーターはリターニアの情勢に詳しくないため、なんとなく「その事実というのは?」と聞いた。
「ウルティカは巫王の一族代々に伝わる領地だ。ならば、ウルティカ伯爵とは何だと思う?」
【権限記録】
新旧政権の交代によって、リターニアは大きな波乱を迎えた。巫王の残虐な統治を耐えてきた人々は、その怒りを巫王と関りを持つ全ての人や物事にぶつけた。エーベンホルツの両親も、巫王の遠い血縁者であるために命を落とした。
一方、旧時代の終焉を歓迎しない少数派もいた。彼らはあらゆる手を尽くして双子の女帝の統治に反抗した。中でも最も急進的な一派は「巫王の残党」と呼ばれている。彼らはエーベンホルツが両親と同じ運命を辿ってしまうことを防いでくれたが、彼をより大きな渦へと引き込んだのだった。
エーベンホルツは一言で彼らが自身にしたことを説明した――「私の脳に、『塵界の音』の一部を埋め込んだのだ。」
医療部は数度エーベンホルツの脳部を検査したが、「塵界の音」がどのような形で彼の脳に宿っているかを把握できなかった。しかし、それが実在していることは確かであり、激しい頭痛を引き起こしたり、エーベンホルツの音楽才能とアーツに大きく関係している。しかし、我々は未だそれが「何か」を突き止めることができずにいる。
エーベンホルツの紹介により、我々はツェルニーからとある研究ノートのコピーをもらった。ノートの曖昧な記載によれば、「塵界の音」の元は巫王が即興で奏でた旋律であり、それが宮廷楽師に記録されて「塵界の音」となったのだという。
「ならば、『塵界の音』は楽譜やテープみたいな形をしているはずでは?」
「私の脳の中に紙切れが突っ込まれているとでも?それともプラスチックが?」
結局、医療部はひとまず彼の解釈を受け入れるしかなかった。
「たった一節の、とても強い旋律なのだ。自分の存在が飲み込まれてしまうのではないかと、常に心配しているほどだ。」
「人間が旋律に飲み込まれる?そんなことはありえるのか?」
「私に言えるのは……同じことを二度起こさせないように、尽力するつもりだということだけだ。」
以降、エーベンホルツはこの問題についての議論を拒んだ。
【権限記録】
ロドスに来たばかりの頃、エーベンホルツはハイビスカスやツェルニーが形容したような刺々しさや、言葉遣いにおける攻撃性を滅多に見せなかった。ほとんどの者は、物静かで礼儀正しいリターニア出身のオペレーターがロドスにやってきた、ということしか知らなかった。当時の彼は積極的に人と話すこともなく、いつも一人でぼうっとしながら、肌身離さず持ち歩いているチェロを眺めていた。心配して何か助けが必要かと彼に尋ねる者に対しても、静かに首を横に振るだけだった。
エーベンホルツの初めての外勤任務が、彼に変化が生じるきっかけとなった。かなり順調に成功を収めた任務だった。ロドスは、とある環境が極めて悪劣な福祉施設から、十数人の孤児を助け出した。そのうち鉱石病に感染しなかった者は信用のある組織に託し、感染者はロドスに収容した。
特筆すべきなのは、施設の管理者の嘘を見破り、救出作戦でアーツを使ったサポートなど、エーベンホルツが終始極めて重要な役割を果たしたことである。
ロドスに戻ったエーベンホルツは、少しずつ以前の状態から脱するようになった。話しかけてくれる者と会話するようになったり、ロドスのことを理解しようとしたり、気に入らない物事を辛辣に評するようになった――もちろん、ドクターやごく少数人相手にのみである。
オペレーターたちが自ら立ち上げた読書会に参加し、その後数名のオペレーターと親交を結ぶこともあった。
このような変化は、大半の者には気づかれなかった。だが一つだけ、誰にもはっきりと見える変化があった。
エーベンホルツはもう、チェロを眺めたままぼうっとすることはなくなった。今の彼はチェロを奏で、その音色と共に軽く歌を口ずさむことが多い。まるで、友人と会話をしているように。
「自堕落を華々しい言葉で飾り立てようと、貴様の浅はかさを隠しきれぬぞ、我が愚かな血縁者よ。」
「お褒めにいただきどうも、老いぼれめ。」
「そして貴様は未だに自分を疑っている。不公平に対して義憤を感じているつもりでありながら、その義憤が自分のものではないかもしれないと疑っている。結局貴様はその懐疑を受け入れた。演じたものでも構わない、ならば最後まで演じ切ればいいと……なんと、なんと滑稽な!」
「ありがたい説教だな。少し時間をくれないか?お前が無駄に垂れ流した言葉を忘れなければいけないからな。」
「ふん……」
「不思議に思っているのだろう?なぜお前が声を出す時に黙れと言わなくなったのかを。」
「言ってみるがいい。」
「一つ目。どれだけ叫んでもお前を黙らせることはできないし、頭痛を和らげることもできないと気がついたからだ。ついでに教えてやろう、今の私にとって後者の方が大事だ。」
「二つ目。お前が結局何であるか、私は未だに知らない。『塵界の音』の残響なのか、それとも私自身の幻聴なのか。あるいはいつか、思いもよらない理由のせいで、私までもクライデのように、耳をつんざく旋律の中で我を失う可能性だってあるかもしれない。」
「だが私はもうお前を恐れてはいないぞ、老いぼれめ。それで十分だろう。」
HP
1678
攻撃力
1550
防御力
135
術耐性
20
配置コスト
25
攻撃間隔
3 秒
ブロック数
1
再配置時間
70 秒

素質

  • デュナーミク
    チャージした攻撃エネルギーのダメージが135%まで上昇、【エリート】または【ボス】のみに攻撃可能な攻撃エネルギーを追加で1つ分チャージ可能
  • アポジャトゥーラ
    攻撃対象の周囲に他の敵がいない場合、攻撃時に追加で攻撃力の15%の術ダメージを与える

スキル

設定で詳細一覧を有効にして、詳細データが表示されます。
  • アッチェレランド
    自動回復手動発動
    初期SP
    5
    必要SP
    15
    継続時間
    5 秒
    攻撃範囲変化、攻撃間隔を超大幅に短縮し、通常攻撃時、敵に攻撃力の50%の術ダメージを与える
    base_attack_time
    0.17
    attack@atk_scale
    0.5
    attack@cnt
    1
  • 旧日の残響
    自動回復自動発動
    必要SP
    13
    全ての攻撃エネルギーを消費し、攻撃範囲内の配置可能マスに消費エネルギー数+1体の「過去の残像」を召喚(30秒継続)、残像は敵が接近時に発動し、周囲の敵に攻撃力の245%の術ダメージを与え、相当の力で敵を自身の中心に引き寄せる
    atk_scale
    2.45
    force
    1

    過去の残像

    HP
    1000
    攻撃力
    100
    防御力
    0
    術耐性
    0
    配置コスト
    0
    攻撃間隔
    1 秒
    ブロック数
    0
    再配置時間
    0 秒
    フラッシュバック
    自動発動
    敵が接近時に発動し、発動時周囲の敵全員に術ダメージを与え、相当の力で敵を自身の中心に引き寄せる
    atk_scale
    2.45
    force
    1
  • 無響の声
    自動回復手動発動
    初期SP
    10
    必要SP
    20
    継続時間
    30 秒
    攻撃速度+80、攻撃力+65%、エリートまたはボスのみを攻撃対象とし、第一素質のダメージ上昇効果を元々の140%まで上昇
    手動でスキルを停止可能
    attack_speed
    80
    atk
    0.65
    talent_scale_multiplier
    1.4

モジュール

  • ORIGINAL
    エーベンホルツの記章
    エーベンホルツはアーツエネルギーの制御に秀でている。
    外勤部門の決定に基づき
    外勤任務においては術師オペレーターとして区分し、秘術師の責務を担う。
    特別に本記章を授与し、
    その証明とする。
  • MSC-X
    源石ダイス収納箱
    STAGEステータス強化説明
    1
    • 攻撃力 +58
    • 攻撃速度 +3
    秘術師の特性
    敵に術ダメージを与える
    攻撃の対象がいない場合はエネルギーをチャージして(最大4回)次の攻撃時に一斉発射する
    2
    • 攻撃力 +75
    • 攻撃速度 +4
    デュナーミク
    チャージした攻撃エネルギーのダメージが140%まで上昇、エリートまたはボスのみに攻撃可能な攻撃エネルギーを追加で1つ分チャージ可能
    3
    • 攻撃力 +90
    • 攻撃速度 +5
    デュナーミク
    チャージした攻撃エネルギーのダメージが143%まで上昇、エリートまたはボスのみに攻撃可能な攻撃エネルギーを追加で1つ分チャージ可能
    「もしや、あなた様は……お待ちください!」
    医療部から出たエーベンホルツは歩速を速めて、声をかけてくる者を振り切ろうとした。しかし相手はぴったりと後ろにつけて、宿舎の前まで追ってきた。
    「この区画は立ち入り禁止だ」
    「やはりウルティカ伯爵様だったのですね!遠目にも溢れ出る気品、ただならぬ方だと見た私の目に狂いはありませんでした!」
    男は額から脂汗を滲ませながら、わざとらしく、密談でもするかのようにぐっと声を押し殺した。
    「ご無事だと思っていました。世を忍んでどちらかに身を寄せているのだと信じておりましたぞ」
    「人違いだ」
    「まさか!アゴノー家に代々伝わるダイスとアーツユニットは、二十数年前にウルティカ伯爵と共に消えた代物です!私は幼い頃からアゴノーと共に育ちました。実物を見たこともありますし、彼本人の口から、陛下より賜ったものだと聞いているのです!似たようなものが、そうそうあるはずがありません!」
    「アゴノー?……知らんな」
    「ですが、確かにアゴノー家のものです。それを武器としているあなた様が、ウルティカ伯爵でないはずがない!」男は息を荒げた。「あの後、私がどんな目に合ったかきっとご存じでないでしょう!奴らは私にアゴノーの狂気が伝染したなどと宣って、触れてはいけない何かのように扱ってきました。だが、アゴノーは初めから最後まで正気だった!もちろん私もです!それなのに、奴らに陥れられて感染者となったせいで、土地も家財も失いました。豊かな地を治める辺境貴族であったのが、今ではこの体たらくです!」
    「同情はするが――」
    「いえ、こんなのはまだ序の口なんです!奴らの残忍さは想像を絶します!」
    「想像を絶する?何があったんだ?」
    「私の一人娘が……どうやって言い包められたのか、私の意志に逆らって、薄汚い平民と結婚したばかりか、おぞましいことに子まで産んだのです!これは死よりも酷い屈辱です!あなた様が治める場所でこのような蛮行を許すおつもりですか!」
    「……」
    「どうか私めを従者にしてください!あの時代へ、恐怖でもってすべての者を律する時代へ連れ戻してください!あなた様を疑うような虫けらどもを絶望の中で震え上がらせ、恐怖でもって平民どもの頭から、身の程知らずな考えを消し去ってください!」
    「もちろん、私も謹んであなた様がくださるすべてを受け入れましょう。恩寵であろうと刑罰であろうと、すべてを!日々命を燃やし尽くすつもりであなた様を畏れ敬い、あなた様に尽くし、あなた様の命令ならばどのようなものだろうと従いましょう!もしこの命をお望みならば――」
    エーベンホルツは重々しくため息をつき、数個のダイスを手のひらに乗せ、男の目の前へと持って行った。
    「では、君を私の従者とする。これから行うのは他言無用の儀式だ。目を閉じてよく聞け。」
    男は興奮のあまり全身が震えていた。
    「ウルティカ伯爵なんてクソくらえだ」
    「?!」
    「皇帝陛下なんてやつらも、選帝侯なんて連中も、公爵も伯爵も男爵も、そして貴族のお前も――いや、元貴族だったか。みんな、クソくらえ、だ」
    エーベンホルツの言葉が続くにつれて、男の顔が歪んでいった。
    「目を覚ませ。自分が人より上であるなんて夢はとっとと捨てろ」
    「すでに土地を失ったのならば、誇りある平民のように、胸を張って生きろ」
    「私にできる忠告は、それだけだ」
  • MSC-Y
    「楽理解釈者」
    STAGEステータス強化説明
    1
    • HP +80
    • 攻撃力 +88
    秘術師の特性
    敵に術ダメージを与える
    攻撃の対象がいない場合はエネルギーをチャージして(最大3回)次の攻撃時に一斉発射する
    攻撃エネルギーがある時、攻撃速度+30
    2
    • HP +120
    • 攻撃力 +112
    アポジャトゥーラ
    攻撃対象の周囲に他の敵がいない場合、攻撃時に追加で攻撃力の18%の術ダメージを与える。他の敵がある場合、攻撃対象の周囲にいる敵全員に自身の攻撃力の25%の術ダメージを与える
    3
    • HP +175
    • 攻撃力 +135
    アポジャトゥーラ
    攻撃対象の周囲に他の敵がいない場合、攻撃時に追加で攻撃力の20%の術ダメージを与える。他の敵がある場合、攻撃対象の周囲にいる敵全員に自身の攻撃力の36%の術ダメージを与える
    ヒゲの少し白くなったエンジニアオペレーターが、私のオーダーしたアーツユニットセットを手渡してくれた。オーダー通りの外観だ。余計な装飾のない素朴な金属ケース、表面が鏡のように磨き上げられた短杖と、完全な球形をした銀色のリザーブユニット。完成したばかりの源石機器からは溶剤のにおいがした。
    私がケースの中から杖を取り出せば、リザーブユニットが静かに浮かび上がる。それは杖の動きに呼応し、私の手のひらから数十センチ離れた中空で安定した軌道を描き出した。
    リザーブユニットに命を下すと、合金製の的に描かれた赤い円は着弾の衝撃で凹んでしまった。文句なしのエネルギー変換効率だ。
    私とエンジニアオペレーターは目を見合わせる。これは紛れもない傑作だと、二人とも確信を得ていた。

    数か月後、私が彼と再び会った時、私の手には古い杖が、ポケットには源石ダイスがあった。
    「古い物ほどよく馴染む、ですか。」彼はそう言った。
    私は肩をすくめる他なかった。
    「どうしてまた古い装備に戻されたのか、理由はお聞きできますか?」彼の目はゴーグルの裏で鋭い光を放っている。「見た目が気に入らなかった、でも構いません。これはエンジニア部のアフターサービスだと思っていただければ結構ですので。」
    「理由は……音だ。」
    「音ですか?」
    私は意を決して短杖を取り出し、軽く振ってみせた。その杖の先端が空気を掻き分けて発する音は、風を切る音ではなく、音楽の音色である。
    「あなたから依頼を受けた後、私もその杖を調べてみました。その杖が発生させる空気の振動周波数は確かに超常的です。しかし不思議ではあっても、アーツの発動にはなんら寄与していません。利益も、障害もです。」
    「それは認めよう。だがこれは私の個人的な――」
    そう、個人的な事情だ。
    私が新しい杖をオーダーしたのは、まさにこの忌々しい音楽を遠ざけるためだった。この音色はかつてアフターグローホールの前に鳴り響いた不思議な旋律と全く同じだ。昼間に古い杖を振れば、夜には必ず同じ夢を見る。あの時の光景と、あの時の旋律を。
    新しい杖は私の夢から音色を失わせることには成功した。しかしあの光景は未だに私の目の前に現れる。音のない足掻きは一層惨たらしく、音のない死闘は一層恐ろしい。
    再び古い杖を持ち始めて、ようやく気付いた。あの悪夢は既に私の人生を頭から爪先まで貫いており、忘れようとする試みは全て徒労なのだと。
    私は逃れられず、和解することもできない。私にできるのはそれが私の一部であることを認め、生涯戦い続けることだけだ。
    新しい杖をオーダーし、そしてその杖を手放したのとまさに同じように。
    ウルティカ伯爵ならば背を向けて逃げ出し、戸惑いと怒りを他人に押し付けることができた。だがエーベンホルツにはそれはできない。
    そしてエーベンホルツにはあの自らを高貴だと思い込む愚かな人々を一喝することはできるだろう。しかし自分が機嫌を損ねてしまった工匠を前にして、失礼な態度を取る権利は果たしてあるのだろうか?
    答えは明白だった。
    再び相手を怒らせるだけかもしれないと不安になりながら、私はどうにか咳払いを一つした。
    「長く込み入った話になってしまうが……お聞きになりたいのであれば、全てをお話ししよう。」
  • MSC-Δ
    朽ちた伝承
    STAGEステータス強化説明
    1
    • 攻撃力 +76
    • 術耐性 +4
    秘術師の特性
    敵に術ダメージを与える
    攻撃の対象がいない場合はエネルギーをチャージして(最大3回)次の攻撃時に一斉発射する
    術ダメージを与えたとき、追加で与ダメージの8%壊死損傷を与える
    2
    • 攻撃力 +102
    • 術耐性 +5
    アポジャトゥーラ
    攻撃対象の周囲に他の敵がいない場合、攻撃時に追加で攻撃力の24%の術ダメージを与える。攻撃対象が壊死損傷の爆発効果中の場合、攻撃時に追加で攻撃力の20%の元素ダメージを与える
    3
    • 攻撃力 +124
    • 術耐性 +5
    アポジャトゥーラ
    攻撃対象の周囲に他の敵がいない場合、攻撃時に追加で攻撃力の30%の術ダメージを与える。攻撃対象が壊死損傷の爆発効果中の場合、攻撃時に追加で攻撃力の30%の元素ダメージを与える
    「貴様がここをそれほど恋しく思っていたとはな。」
    窓からは日光が差し込んではいたが、ガラスはその暖かさを残らず遮断し、自らと同じ冷たく汚れたものへと変えていた。
    「このロビーは記憶と寸分違わず、大して広くもないままだ。とはいえ、このかび臭さは以前に増して耐え難いものになったな。」
    エーベンホルツはがらんとしたロビーを進んでいく。そこにあった高価な家具や調度品は、あるものは高塔を逃げ出した使用人に売りさばかれたのか消えており、あるものは貴重すぎるあまりにか放置されていた。
    無駄に大きなピアノなどは、一度運び出そうとして何かしらの理由で諦めたらしき痕跡が見て取れた。というのも、床にくっきりと傷が残っていたのだ。それはなんとも滑稽で、憎たらしい光景だった。
    壁はほこりとカビに覆われており、すでにその下の模様は見えなくなっている。唯一変わらないのは壁面の埋め込み式暖炉だけだった。薪の燃えさしは新たなほこりを被ってはいるものの、エーベンホルツが去った時と変わらず、暖炉の中に積もったままになっていた。
    「あの時以来暖炉の火は久しく灯されず、それゆえに浮塵と腐朽が容易にこの場所を支配した。これが、貴様の去ったのち、ここで起こったことだ。」
    暖炉の前へと歩み寄った彼は、その中で炎が燃える様子をまだ覚えているような気がした。ここには火が、温もりがあったのだ。
    けれど今、その醜く大きな口が呑み込んでは吐き出しているのは暗闇だけだった。彼は目の前の濁った空気を手で払い、つかの間少しはマシな空気を吸った。
    「無駄なことを。十秒もすればまた、貴様の鼻腔を濁った空気が満たすというのに。」
    エーベンホルツはアーツユニットを引き抜いた。源石のダイスが浮かび上がり、旋回して軌道を描き、光と熱を発する。
    「ああ、好きにするがいい。風を起こし火を呼んで、塵を掃き、腐り落ちたものを焼き払う程度は造作もないはずだ。貴様が今まさにそうしたように、一定の効果はあるだろう。」
    彼が黙ってアーツユニットをしまうと、源石のダイスも手中に戻った。そうして身をかがめれば、暖炉の中から闇が見つめ返してくる。
    「だが、それはいずれ舞い戻るものだ。存分に抵抗し、拒絶し、暗闇が近付けぬよう必死に足掻いてみせよ。これまで長きにわたり戦ってきたようにな。濁った空気を払いウルティカを去るもよし、はるか遠くへ逃げるもよしだ。微かな光を幾度灯せど、長き夜を白昼に変えることなど貴様には決してできぬがな。」
    エーベンホルツは手を伸ばして灰の中を探ると、まだ燃え尽きていない枯れ枝を拾い上げた。
    「衰朽はこのロビーを緩やかに満たし、いずれは貴様の身体と精神をも蝕むだろう。貴様の両親や、それより以前の高塔の主一人一人がそうであったように。」
    「そんなことはない!」頭の奥から生じためまいは一瞬にして、意識のすべてを乗っ取った。その声はあざ笑うような声を轟かせ、彼の視界をぼやけさせる。
    黒く焦げた枯れ枝からは同じく焦げた新芽が伸び、彼の手のひらをすり抜けて手首に絡み、腕へと巻き付いてくる。そこには棘が生え、皮膚を突き破り、彼の骨髄を刺した。鮮血がにじみ出て、枯れ枝を伝い落ちていく。暗闇に落ちた血は、燃えさしに染み込んでいった。
    「ウルティカの血は暗中の枯れ枝。いずれは衰え枯れていくものだ。そこから抜け出すことなどできぬ。」
    エーベンホルツが目を開けば、枯れ枝はその手中にはなかった。腕には薄く灰がついているだけで傷などなく、彼の血は今も皮膚の下を流れている。己の脈拍は、先ほどのすべてが単なる幻覚であることを示しているように思えた。彼はもう、こうした幻覚にうんざりしていた。
    「そんなことはない。」エーベンホルツが口を開く。
    「ウルティカの枝葉がいずれ衰え枯れていくことも、お前が私の身体にまとわりついてくる限り、この悪夢は永遠に終わらないのだろうこともわかっている。」
    「だが、とうに滅びているべき古くくだらぬそうした言説はあまりに長く流布してきた。ゆえにそれは――」
    彼は暖炉の中の暗闇を睨んだ。あの黒く焦げた枯れ枝は燃えさしの中に横たわり、血と黒い土にまみれていた。枝についた鮮血がひび割れた亀裂に染み込んで、熱を帯びたかと思えば火花を散らし、枯れた枝先でパチパチと音を立て始める。瞬く間に火花が集まり、黒い炎となって枯れ枝を包み込む。燃えさしには再び火が付いた。
    「このように終わり、終止符を打たれるべきなのだ。」
    暖炉には闇より深く黒い炎が燃え上がり、枯れ枝の発する光がロビーのすべてを照らし出す。あの声はようやく嘲るのをやめ、ついに答えなくなった。
    「――では、例の情なき大権とやらに会ってみるとしよう。」

基地スキル

  • 音感
    製造所配置時、宿舎中のオペレーター1人につき、知覚情報+11知覚情報1静かなる共鳴に転化される
  • 彷徨う旋律
    貿易所配置時、静かなる共鳴4につき、受注効率+1%
    茫然たる和声
    貿易所配置時、静かなる共鳴2につき、受注効率+1%