• Silence the Paradigmatic
  • 淬羽赫默
  • 사일런스 더 패러디그매틱

淬羽サイレンス

補助タイプ — 祈祷師
敵に術ダメージを与える
スキル発動中、通常攻撃が味方に対する治療行動になる(HP回復量は攻撃力の75%
  • RL10
  • 遠距離
  • 支援
  • 生存
  • 治療
その他の昇格:
/ 90
【コードネーム】サイレンス
【性別】女
【戦闘経験】なし
【出身地】クルビア
【誕生日】5月18日
【種族】リーべリ
【身長】154cm
【鉱石病感染状況】
体表に源石結晶の分布を確認。メディカルチェックの結果、感染者に認定。
【物理強度】普通
【戦場機動】標準
【生理的耐性】普通
【戦術立案】優秀
【戦闘技術】普通
【アーツ適性】優秀
『トリマウンツ科学倫理共同宣言』の発起人であり、ライン生命コンポーネント統括課の特別顧問。医療事務の分野においてロドスと深い協力関係にある。
豊富な医学臨床経験を有しており、ロドスから鉱石病関連の治療を受けると共に、ロドスに対して医学支援を提供している。
造影検査の結果、臓器の輪郭は不明瞭で異常陰影も認められる。循環器系源石顆粒検査の結果に異常があり、鉱石病の兆候が認められる。以上の結果から、鉱石病感染者と判定。

【源石融合率】7%
左足関節上部に鉱石病病巣あり。ロドス加入時と比べてある程度拡散はしているものの、範囲は大きくない。

【血液中源石密度】0.25u/L
循環器系の顆粒密度は当初と比べて拡散の傾向が見られるが、極めて軽微であり、現状、症状は安定している。
サイレンスはケルシー医師やドクターと共にロドスへ帰還することなく、トリマウンツに一ヶ月ほど滞在したあと、遅れて戻ってきた。
帰還後の彼女はすぐ、午後の時間を丸ごと使ってケルシー医師と二人で話し込んでいた。そして簡単な引継ぎを経て、医療部にあったサイレンスのデスクがほかのオペレーターに与えられることとなった。理由はいたって単純で、サイレンスの仕事は現在、トリマウンツでのものが中心であり、以前のようにロドスに長期駐在することができなくなったためである。
イフリータを連れロドスに加入してから、サイレンスは常に医療部の中核を担い、様々な任務の中で大きな役割を果たしてきた。彼女は多くのオペレーターと固い友情で結ばれており、本艦で治療を受ける多くの患者からはとても信頼されている。サイレンスがデスクを片付ける間は、彼女が離れることを聞きつけたオペレーターや患者たちが次々に集まってきて、ついには即興の送別会にまで発展した。
無論、サイレンスは完全にロドスを去ったわけではない。本人も、引き続きロドスに協力したいという意向を明確に示してくれた。だが、彼女は今の立場上、個人としてロドスと繋がりを持つことは許されない。『トリマウンツ科学倫理共同宣言』の発起人であり、ライン生命コンポーネント統括課の特別顧問となった彼女の背後には、クルビアの科学界そのものが存在している。今のサイレンスと共にプロジェクトを進めることは、すなわちクルビアと複雑な関係を持つことと同義になってしまうのだ。ロドスの立場からすると、そのような関係は避けたいものである。
サイレンス自身も当然その難しさを理解しており、自ら進んで解決策を提案してくれた――患者として、ロドスでの継続治療を望む、ということである。これにより、サイレンスは個人的にロドスと接触する機会を確保できると同時に、今後の共同作業にも非公式的な解釈の余地を残してくれた。
これは間違いなく、ロドスに対する善意である。またロドスとしても、そんな彼女と引き続き協力関係を結びたいと願っている。しかしその過程で、我々は一つの事実を確認した――今のサイレンスは確かに、すべてを医学に捧げていた昔の彼女とは違うのだ。
あの事件を経て、ライン生命では大きな人事異動が起きた。
サリアは正式に警備課主任の職を辞し、彼女の指名を受けた警備部の職員が後任となった。
ヤラも正式に人事調査課主任の職を辞し、彼女の使命を受けた人事調査課の職員が後任となった。
そして、パルヴィスが亡くなったことで、構造課主任の職は、クルビア学界の関連領域における先駆者によって引き継がれた。
エネルギー課主任の座はというと、二ヶ月近く続いた空席状態を経て、復帰したフェルディナンドが引き続き担当することになった。
こうした一連の異動はまだ当然の調整と呼べる範囲だが、次に述べる二つの人事異動は、ライン生命が迎えようとしている変化を予告しているとすら言えるだろう。
クリステンは統括の座を辞し、コンポーネント統括課の管理は、創設者の一人であるサリアが代理として引き受けることになった。
そして、元構造課研究員のサイレンスはコンポーネント統括課の特別顧問となり、同時に科学倫理委員会におけるライン生命の代表も兼任すると決まった。
今やサイレンスは、全トリマウンツ、ないし全クルビア科学界が注目する人物となっている。
彼女が発案した『トリマウンツ科学倫理共同宣言』は、現在の科学者や科学団体が倫理を疎かにし、踏みにじっている事実を鋭く指摘している。そして、科学を発展させると同時に、科学が根付く基盤を固め、より人道的な科学研究環境を作ることを提唱するものでもある。
科学倫理委員会の発足は、この『宣言』による成果の一つだ。本委員会のメンバーは倫理的基準のさらなる改善に努め、それを礎に科学倫理を守ることを目指している。その中で、ライン生命の代表を務めるサイレンスの重要性は言わずと知れたことだろう。
当然ながら、今まで一介の研究員でしかなかったサイレンスが、周囲の支援なくしてこれほどの地位を得ることなどできない。見識ある者ならば、彼女の背後で様々な力が渦巻いていることに気付くだろう。
その状況に置かれることに対して、サイレンスが出した結論は、簡潔で力強いものだった。
「こうしないと私の願いを実現できないのなら、私はこの束縛を喜んで受け入れるよ。」
サイレンスは自身が遭遇した出来事をドクターに共有した。
サリアをフォーカスジェネレーターの残骸から助け出したあと、サイレンスはまずトリマウンツに戻り、サリアとイフリータの安全を確保したという。そしてその後、ヤラからの連絡が来たのだ。
ヤラは、定年退職する前に、サイレンスのためにあと一つだけできることがあると告げてきた。マイレンダー基金の責任者の一人であるブリキと会わせてあげられる、というのだ。それが意味することをサイレンスは十分に理解していた。つまりはこの国を左右する力を持つ人間と直接対話できる、ということだ。ただ一つ問題があるとすれば、サイレンスの準備が、本人の宣言通り整っているかどうかだった。
「私はその話を受けることにしたの。だけど、まさかあの執務室でブリキさんだけじゃなく、ジャクソン副大統領も待っているとは思わなかった。」
クルビアの副大統領、コンラッド・ジャクソンは彼女を熱烈に歓迎したという。サイレンスは困惑したが、同時にこれはチャンスだということも悟った。
彼女はブリキとジャクソンに対して、ライン生命にまつわる一連の事件について自身の観点と結論を述べた。意外にも、彼女の理想はジャクソンから高く評価されたそうだ。
「副大統領は、私をこの国にとって必要不可欠な人材だと言ったの。昔の私なら信じていたかもしれないけど、その時の私はただ恐怖を覚えた。」
そしてその後は、すべてがとんとん拍子で進んでいった。それは自分の理想が素晴らしかったからではなく、自分は偶然そのポジションに立つのにちょうどよかっただけだということを、サイレンスは理解している。たとえ自分がいなくとも、別の誰かが同じポジションに置かれていたことだろう、と。
だが、このポジションに置かれたからには、他人から見れば絵空事のような理想でも、彼女は本気で実現させるつもりだ。
「これから私に何が起きるかはちゃんと理解してるよ。だから、サリアはライン生命にとっても、私にとっても必要不可欠な存在なんだ。」
ライン生命にとって、統括を失ったことは大きな柱を失ったも同然の事態だ。そんな時に人々を安心させられるのは、統括と同じ創設者の一人、サリアの威信だけであり、また、ライン生命の破綻を望む者など誰もいなかった。
サイレンスにとって、過去のわだかまりはもはや取るに足りないものとなった。今重要なのは、いかにして未来を見据えるかだ。サリアにはまだ時間が必要だということを、サイレンスは理解している。ゆえに彼女は、イフリータの後見人をサリアに任せた。自分の考えとサリアの考えは、本質的には矛盾しないものだと、サイレンスは信じている。二人は、最終的には必ず同じ道を歩むことになるはずなのだ。
だが、理想の追求には常に代償が伴うものだ。
サイレンスの支払った代償の一つは、イフリータを怒らせてしまったことだった。
それも当然、イフリータからすれば、日常のすべてが突然今までと真逆になってしまったようなものなのだ。サリアが近しい保護者となり、逆にサイレンスのほうが滅多に会えない存在になってしまったのだから。
そうした状況について、サイレンスは少し思案したものの、結局は苦笑いするばかりで、何も言わなかった。
最近たまたま聞いたんだけど、サイレンスは偉くなってから人が変わったなんて言ってるやつがいるんだな。っつーか、サイレンス自身、ちょっとそう思ってるみてーだし。
バカバカしーぜ。全員サイレンスのことわかってねーな。
実際、今のサイレンスはいっぱい会議に行って、いろんな人に会ってるし、前みたいにただの医者じゃいられなくなっちまったのは事実だ。でも、戻ってくるたびにオレサマの身体のこと気にしてくれるし、病気を治す技術がどんだけ進展したかを教えてくれるんだぜ。
先週本艦に戻ってきた時なんか、わざわざ医療部に寄って、ワルファリンと先進医療技術ってやつのこと、ずーっと話し込んでたくらいだし。そんで、一緒にラボで実験もして……そのあとは、昔治療を担当してた患者の見舞いにもいって、しばらくおしゃべりしてたみたいだからな。
つまり、サイレンスはぜーーーーんぜん変わってねーんだよ!ただやることが多すぎて、疲れちまってるせいで、全員に優しく対応する余裕がなくなっただけだ。
それに、そのおかげっつーか、最近オレサマに優しくする医者が増えてきた感じもする。多分アイツらは、サイレンスが留守にしてることで、オレサマが怒り出すんじゃねーかと思って心配してんだろうな。
ったく。あの頃オレサマが怒ってたのは、サイレンスからサリアに会っちゃダメって言われてたからだっつーの。だってフツー、まだ子供だからとか、分別ついてないからとか言われたら怒るに決まってんだろ。
それに比べて今は、サイレンスがトリマウンツで何してるのかをちゃんと知ってるからな。サイレンスが帰ってきた時、一緒にメシ食ってると、どんなことしてたのかとか、トリマウンツで何が起こったかとか、毎回教えてくれるんだぜ。
最近は、サイレンスとサリアが話してることがちょっとずつわかるようになってきたし、サイレンスがスゲーことをやろうとしてるのもわかってる。だからむやみに怒ったりしねーよ。オレサマはもう、サイレンスがそばにいてくれなきゃヤだとか駄々こねるようなガキじゃねーんだ。
なんたって、何度も外勤任務の隊長任されてきたくらいだからな。リーダーってのは、誰よりも多くのもんを背負わなきゃいけねーことはちゃんとわかってる。昔のサイレンスはこんなことやりたがらなかったけど、今はやるって決めたんだから、オレサマはそれを応援しねーと。
だから最近、オレサマもマジメに勉強してんだ。サリアがあんなに教え上手だったなんて、初めて知ったぜ……だけど、医療部の授業ってマジで難しいな……
とにかく、オレサマの夢は、いつかサリアとサイレンスと肩を並べて立てるようになることなんだ!どんな困難が相手だろうと、三人で力を合わせれば、オレサマたちの敵じゃねーからな!
――イフリータの日記
丸一日の会議を終えたサイレンスは、無意識に構造課のラボの前まで来てしまったことに気が付いた。
すると、よく知る同僚がサイレンスを呼び止めてきた。手を伸ばして彼女の肩を叩こうとしたものの、途中でやめてしまったらしく、その手は気まずく中途半端に伸びている。
「うちでやってる実験を見に来たの?倫理審査の報告書なら、警備課に提出したばっかりでさ。でも、せっかく来てくれたし、その……案内しようか?」
「大丈夫だよ、アルベ。ラボへの行き方はわかってるから。」
「あ……はは、そっか、そうだよな。じゃあ……ごゆっくり。僕はもう上がるよ。」
「うん、お疲れ様。」
「そうだ、君が置いていった実験とデータのことで……えっと、さ。僕もラミーもずっと聞きたいと思ってたんだけど、本当にもう戻ってこないのかい?」
サイレンスはロドス本艦を出るとき、医療部の同僚からも同じような質問をされていた。
君がいなくなるなんて、すごく残念だ……
そんな思いが、言葉にせずとも彼らの眼差しからは読み取れた。
ふと、サイレンスは、サリアの書斎にある鍵のかかった引き出しの中、しまい込まれた論文の下書きのことを思い出した。十年近くが過ぎた今、その論文たちが発表されることはもうないのだろう。科学研究の競争は残酷なものであり、今のサイレンスの時間は非常に限られていた。置き去りにされないように精一杯しがみついたとしても、研究の最先端を進み続けることはすでに不可能だろう。
この選択は、果たして正しいのだろうか?
恐らく、この先の自分も依然として、自己懐疑と不安に苛まれることになるのだろう。
構造課の研究員たちが全員退勤したあと、サイレンスは慣れ親しんだ実験台の前に立った。そして、かつてここで数多の深夜を過ごした時と同じように、ラボの明かりを消した。
彼女の目の前にあるのは、すべての課に通じるライン生命の廊下だ。そこには以前と変わらずに、一晩中明かりが灯っていた。
HP
2277
攻撃力
522
防御力
184
術耐性
25
配置コスト
15
攻撃間隔
1.6 秒
ブロック数
1
再配置時間
80 秒

素質

  • 無言の支え
    攻撃範囲内の味方全員に10%の加護を付与する。味方のHPが低いほど効果が強まる(最大効果値:HPが最大値の30%未満時、24%の加護を獲得)
  • 庇護の翼
    1秒ごとに攻撃範囲内のHPが最大値の50%未満の味方のHPを、淬羽サイレンスの攻撃力の5%回復。味方【ライン生命】に対する効果値倍増

スキル

設定で詳細一覧を有効にして、詳細データが表示されます。
  • 止まらぬ歩み
    自動回復手動発動
    初期SP
    15
    必要SP
    30
    継続時間
    25 秒
    攻撃力+80%
    atk
    0.8

    夜の灯火

    ダメージを受けない
    HP
    1000
    攻撃力
    0
    防御力
    0
    術耐性
    0
    配置コスト
    0
    攻撃間隔
    1 秒
    ブロック数
    0
    再配置時間
    5 秒
  • 俯瞰する視点
    自動回復手動発動
    初期SP
    14
    必要SP
    24
    継続時間
    12 秒
    攻撃速度+60、スキル発動中は支援ドローンを1体使用可能
    ドローンは配置後、周囲の味方に淬羽サイレンスの第一素質の3倍の効果を付与。スキルが終了するか、淬羽サイレンスが退場するとドローンも消滅
    attack_speed
    60
    damage_resistance_scale
    3

    夜の灯火

    ダメージを受けない
    HP
    1000
    攻撃力
    0
    防御力
    0
    術耐性
    0
    配置コスト
    0
    攻撃間隔
    1 秒
    ブロック数
    0
    再配置時間
    5 秒
    夜の灯火
    パッシブ
    周囲8マス内にいる味方に、淬羽サイレンスの第一素質の3倍の効果を付与
    damage_resistance_scale
    3
  • 先駆者たちの翼
    自動回復手動発動
    初期SP
    20
    必要SP
    30
    継続時間
    60 秒
    攻撃力+30%、第一素質の効果が1.8倍まで上昇。スキル発動中1回限り、攻撃範囲内にいる味方が致命的なダメージを受けた際、対象のHPが10秒間1残る効果が発動
    使用上限2回、手動でスキルを停止可能
    atk
    0.3
    talent_scale
    1.8
    grave_duration
    10
    skill_max_trigger_time
    2

    夜の灯火

    ダメージを受けない
    HP
    1000
    攻撃力
    0
    防御力
    0
    術耐性
    0
    配置コスト
    0
    攻撃間隔
    1 秒
    ブロック数
    0
    再配置時間
    5 秒

モジュール

  • ORIGINAL
    淬羽サイレンスの記章
    淬羽サイレンスは味方に持続的な防護の提供に秀でている。
    外勤部門の決定に基づき
    外勤任務においては補助オペレーターとして区分し、祈祷師の責務を担う。
    特別に本記章を授与し、
    その証明とする。
  • BLS-X
    明晰な思考の助け
    STAGEステータス強化説明
    1
    • HP +100
    • 攻撃力 +45
    祈祷師の特性
    敵に術ダメージを与える
    スキル発動中、通常攻撃が味方に対する治療行動になる(HP回復量は攻撃力の100%
    2
    • HP +130
    • 攻撃力 +60
    庇護の翼
    攻撃範囲内の味方の最大HP+6%、さらに範囲内のHPが最大値の50%未満の味方に対して、1秒ごとに淬羽サイレンスの攻撃力の6%のHPを回復させる。味方【ライン生命】に対する効果値倍増
    3
    • HP +150
    • 攻撃力 +70
    庇護の翼
    攻撃範囲内の味方の最大HP+10%、さらに範囲内のHPが最大値の50%未満の味方に対して、1秒ごとに淬羽サイレンスの攻撃力の7%のHPを回復させる。味方【ライン生命】に対する効果値倍増
    この先に、サイレンスの新しいオフィスがある。
    その場所へと歩んでいく彼女の傍らには、要人警護の規則に則り、二人の警備課職員が彼女の荷物を携えて立っていた。
    そう、今や彼女は要人と呼ばれる存在になったのだ。
    ここは統括執務室の下の階で、各種事務系のオフィスも同じ階に集められている。
    彼女にとっては知らない場所でもなかったが、なにやら今日は冷房が少し肌寒く、靴音がいつもより響く上に、周囲からは……刺すような視線を感じて、彼女はたまらずため息をついた。
    けれどそんな気も知らず、後ろに控えた警備課職員の一人は、内心その姿に尊敬の念を募らせていた。
    というのも、そのため息を就任早々ライン生命の未来を憂えて発したものと捉えたからだ。
    その時、彼の端末が鳴る。何か連絡が来たようで、彼はそれに小声で応答すると、通信を切った。
    「何かあったの?」
    「いえ、どうぞご心配なく。たいしたことではありません。誰かがエンジニア課のパイプラインを勝手に使って何かを送ったようでして、それを同僚が追跡しているだけのようです。」
    ともあれ、オフィスはもうすぐそこだ。
    警備課の職員は慣れた手つきでドアを操作すると、「どうぞ」と彼女を促した。
    『――認証完了。ようこそ、コンポーネント統括課特別顧問、オリヴィア・サイレンス女史。』
    彼女はドアを開け、オフィスへと足を踏み入れる。
    警備課の職員は荷物をローテーブルの上に置くと、彼女がうなずいて見せたのを合図に出て行った。
    部屋の中を見渡せば、そこは標準的な大型オフィスで、イフリータが走り回っても余りあるような広さだった。
    と、感慨に浸る間もなく、背後の扉が突然開くと、すぐに閉まる。
    「まだ何か――」彼女は言いかけた言葉を呑み込んだ。そこにいたのは、人間ではなく……
    「ミーボ!?」そう、それは紛れもなく、あのメイヤーの自信作だ。
    ミーボが背負った袋の中にはコーヒー豆とコップが入っており、一通の手紙が添えられていた。無論、その筆跡はメイヤーのものだ。
    『お祝いに何を贈ろうかずっと考えてたところに、ジョイスがコーヒー豆をあげるつもりだって聞いたから、ビビッと来て特別仕様のミーボを作ってみたよ。』
    『君が出発するまでに間に合わせられなかったから、完成したら郵送しようと思ってたんだけど、統括課の人に聞いたら君宛てのプレゼントがもう山積みで、安全検査だけでも半月かかるって話で、待ちきれなくてエンジニア課のパイプラインを拝借しちゃった。』
    そんな手紙を読んでいると扉をノックする音が響いた。
    まずい、とサイレンスは思う。もしミーボに気づかれたら――
    だが、顔を上げてみれば、ミーボは新しいデスクに飛び乗り、複雑な変形過程を経て、コーヒーメーカーに早変わりしたところだった。
    そこへ、警備課の職員が申し訳なさそうに入ってくる。
    「申し訳ありません、サイレンスさん。例のパイプラインで送られた荷物、どうやらこのオフィスに届いたようなのですが……おや、そちらは?」
    サイレンスは反射的に答えた。
    「ただのコーヒーメーカーだよ。」
    「ですが……」
    「昇進祝いに友達が贈ってくれたの。何か問題でも?」
    サイレンスはそう言いつつ、コーヒー豆をミーボの中に入れ、なるべく手慣れたふうを装ってコーヒーを淹れようとした。
    ――えっと、ボタンはこれかな?あっ、よかった、合ってそうだ……などと思いながら。
    「いいえ、異常がないようでしたら問題ありません。失礼いたしました。」
    警備課の職員は疑う様子もなく身を翻して出て行き、彼女は安堵の息をついた。
    そういえば、と手紙の続きに目を落とせば、こんなことが書かれていた。
    『送別会でも言ったけど、改めて昇進おめでとう、サイレンス!次、本部に帰った時は遊びに行くからね!』
    その文言に、彼女は少し心が軽くなった気がした。
    以前とは変わったことも確かにあるが、ずっと変わらないこともあるようだ。
    このコーヒーメーカーがあれば、眠気に負けずに明晰な思考を保ち続けられるはずだと、彼女は思った。

基地スキル

  • 鳴りやまない電話
    事務室配置時、事務連絡速度+40%
  • ラインテクγ
    製造所配置時、製造効率+30%